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映画「東京物語」

ついに小津安二郎監督作品を鑑賞しました。周りの絶賛からなんとなく大人の作品だと感じていたので自分には早いのでないかと思っていました。しかしすごくよかったです。本当によかったです。

 東京物語 (1953)

監督

小津安二郎

脚本

野田高梧

小津安二郎

キャスト

平山周吉:笠智衆

とみ:東山千栄子

紀子:原節子

金子志げ:杉村春子

平山幸一:山村聰

文子:三宅邦子

京子:香川京子

沼田三平:東野英治郎

金子庫造:中村伸郎

平山敬三:大坂志郎

服部修:十朱久雄

よね:長岡輝子

おでん屋の女:桜むつ子

隣家の細君:高橋豊子

鉄道職員:安部徹

アパートの女:三谷幸子

平山實:村瀬襌

勇:毛利充宏

患家の男:遠山文雄

巡査:諸角啓二郎

艶歌師:三木隆

尾道の医者:長尾敏之助

解説

日本映画を代表する傑作の1本。巨匠・小津安二郎監督が、戦後変わりつつある家族の関係をテーマに人間の生と死までをも見つめた深淵なドラマ。故郷の尾道 から20年ぶりに東京へ出てきた老夫婦。成人した子どもたちの家を訪ねるが、みなそれぞれの生活に精一杯だった。唯一、戦死した次男の未亡人だけが皮肉にも優しい心遣いを示すのだった……。家でひとり侘しくたたずむ笠智衆を捉えたショットは映画史上に残る名ラスト・シーンのひとつ。

http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=136157

 感想

いろいろなテーマが絡み合っていてとても深かった。変わり続けること、変わらないこと、年を取るたびにさまざま変化があり、観る側も年を取るにつれ新たな発見があるのではと思った。

東京に旅行に来た両親に対し、仕事を理由にあまり構ってあげない子どもたち。母親が危篤になっても長女は「喪服を持っていくか」という話をしてしまう。母親の葬式が終わると今度は帰る話。そんな中、1番温かく接してくれたのが、戦死した次男の妻の紀子。なぜか他人が1番親切にしてくれる。血のつながりのある人たちは冷徹な視線で描かれている。

長女は一見するとひどいことを言っているようだけれど実際は目の前のことに対処しているだけのよう。両親をどこかに連れて行きたい気持ちはあっても自分は忙しい。だから熱海の旅行を提案する。母親が危篤になったときでも、もしかしたらと考え喪服の準備をする。葬式の後も東京での日常を考え、早く帰らないと、と思ったのだろう。ただ、このようなことになるのは血のつながった家族だからかもしれない。年老いた両親の死に対しては案外冷静になれると思う。医者である長男も似たような感じ。

長女と対照的なのが紀子。仕事を休んで2人を観光名所に連れて行く。もしかしたら紀子は夫の両親と接することで夫を忘れないようにしているのかもしれない。写真を置いているのも忘れないようにするためかもしれない。家族よりも他人の方が優しくできるというのもよく分かる。

嫁入り前の次女の京子は母親の葬儀後の長男・長女の行動に憤る。東京の日常のためにすぐに帰ってしまった長男・長女。少しの間、尾道に残っていた紀子。京子はその憤りを紀子に話す。それは仕方のないこと。自分もそうなってきている。

変わりたくないと思っていても変わってしまう。変わらなければならない。それを考えられる作品。

おわりに

最初と最後が映される場所は同じです。その場面から思うことはいろいろありました。年を取るにつれてさまざまな変化があるので、また観たら別のことを感じるのではないかと思いました。

この作品というか小津映画、さまざまな人が影響を受けているようです。そう考えると今自分が面白いと思える作品もどこかで小津映画とつながっているのだなと思ってしまいました。