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平野啓一郎「マチネの終わりに」

マチネの終わりに

平野啓一郎

はじめに

11月に福山雅治×石田ゆり子で映画化ということで映画を見に行きたいなと思い、その前に原作を読んだ。映画情報から40代の大人の恋愛みたいに思っていたけど、そうといえばそうだし、違うといえば違う感じだった。

感想

 美しすぎる文体で、浸ることのできる一冊だった。クラシックギターの演奏などの芸術に関することは文章にすることは難しく、「すごい」等の一言で終わらせがちだが、それをうまく文章にしているのが素晴らしかった。感動をこのように言葉にできたら、その素晴らしさを人に伝えることができるのにな、と。

内容に関しては、やはり40代の大人の恋愛だなと思った。若いときとは違って、ただ「好き」という気持ちだけでは一緒になれない。どこかで「最後かもしれない」「諦めないといけない」と考えて生きている。長く生き、多くの経験を積むといろいろと無駄なことまで考えてしまうのかもしれない。人生の軸に家庭以外にもやりがいなど他の軸もあるから家庭だけを考えることもできなかったのだと思う。蒔野も洋子も二人ともその軸がはっきりあるからこそ、そこに向かっていけたと思うし、それぞれの考え方も好きだった。多くのことを学び続けているからこそ、そのような考えに至るのだなと思った。この本は自分にとって難しい言葉もあったし、ほとんど知識を持っていない話も多かった。それについては自分ももっと勉強するべきだと思ったし、多くの経験によって魅力的な考えを持つことができているかもしれないと感じた。

 『人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?』

 この蒔野の言葉が胸に響いた。時間は未来から過去へ流れていると考えているので、よくよく考えると当たり前だとなったけど、未来と現在について考えるあまり、ここまで過去のことについて真剣に考えていなかったなと思う。確かに意味を持たなかった過去があることをきっかけに急に意味のある思い出に変化したり、当時のつらかったことも笑って話せるようになったりとか。あとは何かと統合して自ら過去を作り出したりとか。分かっていそうで分かっていなかった考え方だった。二人がこの話がすぐに分かったのも今までの人生経験があったからだろうな。感動した。

おわりに

映画公開を前に読み終わることができてよかった。また映画鑑賞後に感想を書けたらいいと思う。

そしてこの本をきっかけに平野さんの本をもっと読んでみたいと思った。今一番気になっているのは「ある男」なのでこの本かな。

「マチネの終わりに」は読み終わったときに単に面白かったという感じではなくて、いい本を読んだなという感じだった。そういう本に再び出会えるように本を読んでいきたい。