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アルバム「AKIRA」から思い起こされたこと

6年8か月ぶりのアルバムが発売された。アルバムについて初めて聞いたのは2年前の2018年だったかと思う。「1461日」が2016年8月に配信限定でリリースされてCDに収録されないかな、なんて思っていた日々が続いていたので、ついに収録されるときが来たか、と当然嬉しく感じていた。
そこからさらに、配信限定やそもそも配信もされない曲がどんどん増えていき、いつ正式に発表されるのだろうとずいぶん長い間感じていて2020年10月についに発表された。少し遅れてアルバムタイトルが発表され、今回のアルバムに込められた思いを知ることになった。

残響

2009年に発売されたアルバム「残響」。「最愛」を聴きたくて手に取った。
全曲聴いて当時特に好きな曲は「18 ~eighteen~」「最愛」「旅人」「東京にもあったんだ」。「HUMAN」まで出たアルバムの中で一番好きなアルバムなのだけれど、10年経った今聴くとこのアルバムはとても深いものだなと感じる。
ちょうど自分の置かれた環境が変わる時期でありタイミング的に心に響いた曲が多い。生きているとはどのようなことだろうか、と教えてもらえたような曲であった。
「群青 〜ultramarine〜」は何度も聴いているうちに好きになった曲である。自分が懸命に生きていても、地球は大きすぎて地球に対して何もできない。何かが起きても何も変えることができずにいる。振り回されているだけかもしれない。それでも生きたい。愛したい。そんなメッセージを感じるようになった。

HUMAN

2014年に発売されたアルバム「HUMAN」。
「残響」よりもテーマが壮大になったように思う。人間とは生物とは自分とは何なのか。考えても答えが出ないような問いに対し、必死に答えを探しているように思えた。

「波風ひとつ立たない人生なんてない 時に神を憎むほどの出来事が襲っても…」

「暁」は福山さん自身が45年生きてきた中で様々なことがあった。予定通りにいかないこともたくさんあった。そんな経験があったからこそ生まれた曲ではないかと感じた。

何が起きても懸命に生きていくことを決意しても、地球は僕らを気にもとめないまま、陽は昇り、今日が始まってゆく。

また、「HUMAN」を聴いて弱い者は強い者に食べられてしまうのだろうかと考えた。そしてアルバム全体を通して、何があっても生きていく。自分は何を成し遂げるべきなのだろうか。何のために生まれたのだろうか。という問いが聞こえてくるような気がした。

AKIRA

冒頭で「1461日」が収録される日が来たのかと思ったが、発表時には収録曲として記載されていなかった。少し残念な気がしていたが、数日後アンケートがあり、そのアンケートの結果収録されることが決まった。
また、「暗闇の中で飛べ」「失敗学」「始まりがまた始まってゆく」などは何度か聴いて好きな曲ではあるが、音源化は長い間されていなかった。今回、ようやくじっくり聴ける機会を与えられ嬉しかった。
今回、死生観にも向き合っており、「AKIRA」「彼方で」はアルバムを購入し、自分の好きなタイミングで聴いて欲しいとのことであった。

アルバムに関してはこれだけ長い期間、歌詞を読んで収録された順に聴くということは今までなかったように思う。それだけ歌詞と収録順に意味があるアルバムだなと感じている。歌詞だけでなく音楽的にも今までと異なるように思える。いくつか好きな曲の感想を書いていく。「AKIRA」はうまくまとまらなかったので今回は見送ることにした。

・暗闇の中で飛べ

初めてのことは怖いけど時間は前に進んでいくだけで飛ぶしかない、という歌詞が大好き。

・失敗学

失敗しても次に活かすことができればそれは失敗ではない。好きなことをしていてもすべての仕事が好きなことばかりではない。負けずに取り組んでいこう。50代の福山さんが若い人に仕事とはどういうものかを教えてあげている感じが好き。

・始まりがまた始まってゆく

予定通りにはいかないのが人生。「僕が知らない僕に会いに行こう」歌詞にある通り未来は分からないけど進んでいこうという歌詞が前向きにしてくれる。また、歌詞に音楽用語が含まれていたり、メロディも聴いていて面白いので好きだった。
歌詞には「協奏曲」の表記で「シンフォニー」と歌っているがシンフォニーは正しくは「交響曲」の意味。オンラインライブでは「シンフォニー」と歌って「交響曲」の表記となっていたが、内容からいくと「協奏曲(コンチェルト)」だと思われる。

・彼方で

初めて聴いたとき感動した。今までになかった表現だった。しかも「彼方で」は歌詞も初めてのこと(死生観)を表現しているので二重に驚いた。

AKIRA」「彼方で」以外の曲たちについても、ポジティブなだけでないどうしようもできないことが少しだけ含まれていて少しだけ怖さというか前向きだけな曲ではないということを感じさせてくれる曲ばかりだった。私自身も前向きだけな曲はあまり好きではなく少し暗さみたいなものを感じられるものが好み。切り取り方がよいのだろうなと感じる。聴いていて面白かった。

news.yahoo.co.jp

おわりに

今回の「AKIRA」では死生観にも向き合っている。「残響」から「HUMAN」に向けてテーマが壮大になっていることを考えると自然の流れかなと思う。そして「HUMAN」からだんだんとゴールに向かっているようにも感じた。
私自身「残響」は発売当時から好きなアルバムではあったが、10年経って歌詞が改めていいと思えた曲がいくつかある。なので「AKIRA」も10年またはそれ以上の時を経てより好きになれるといいと思う。