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深緑野分「ベルリンは晴れているか」

ベルリンは晴れているか

深緑野分

感想

読み終わるのに4か月もかかってしまった。
第2次世界大戦のことをよく知らないからか、終盤になるまでなかなか読み進められることができず、読みたいという気持ちにもなれなかった。

内容としてはベルリンから見た戦中・戦後の話。このときのベルリンを詳細に描いていて、自分がこの地にいるような感覚で読むことができた。

戦争ではそれぞれの人が今を生きるのに精いっぱいだったのだろうなと思った。
多くの人の命だけでなく心も奪っているなと感じた。心がもっと豊かであればアウグステはクリストフに対し、もっと別の接し方もあったのではないだろうかと考えられる。もちろん、クリストフの行いは許されることではない。それでもアウグステの使った手段は適切ではない。もっと最適な方法があったように思える。

一方で、クリストフは結局本当は何をしたのかがよく分からなかった。アウグステと会ったとき、事実を知ってしまった。クリストフは今までどんな理由で何をしてきたのだろうか。それは真実であるのか。アウグステの予想のままで終わり、事実が語られることがなかったのが少し残念だった。というかクリストフの行いについて自分自身も知りたかった。

また、本作では「エーミールと探偵たち」が最初から最後までキーとなっていた。自由に本を読めることの素晴らしさを改めて知ることができてよかった。

本作を最後まで読み、ホルンとの今後のことなど本にまつわる話をもっと知りたいと思ってしまった。ただ本作では戦争でさまざまな人が殺され、生き残った人でも心を奪われたということ。そして戦争によりアウグステが行ってしまったことが描きたかったのだろうと思う。アウグステの告白まで本当に長かったけど、早くアウグステも大好きな本を読んで欲しいと願ってやまない。

 

ベルリンは晴れているか

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